「皆さんは美味しいエスプレッソを飲んだことがありますか?」
前回は、「日本で飲むエスプレッソが美味しくない理由①間違った情報に流されすぎ」についてコラムを公開させていただきました。しかし、きちんとした情報を知っていたとしても簡単に美味しいエスプレッソが提供できるわけではありません。そこで今回は「日本で飲むエスプレッソが美味しくない理由②お店側のスキル不足」について解説していきたいと思います。
お店を営んでいる方はもちろん、お客様としてエスプレッソを美味しく飲みたい方も、是非今回のコラムを参考にしていただければと思います。
【目次】 |
1.エスプレッソ抽出について |
2.日本で飲むエスプレッソが美味しくない理由②お店側のスキル不足 |
3.まとめ |
エスプレッソ抽出について
はじめにエスプレッソの抽出方法とエスプレッソマシンについて簡単に触れておこうと思います。
抽出方法
エスプレッソは、極細挽きにして押し固めたコーヒーの粉をエスプレッソマシンといわれる機械にセットし、約9気圧の圧力を加えることで無理やりお湯を通過させ、短時間で抽出したコーヒーになります。
本場イタリアでは25秒前後で、約25ccのエスプレッソを抽出することが理想的な美味しいエスプレッソといわれています。
セミオートエスプレッソマシン
近年さまざまなエスプレッソマシンが開発されていますが、その多くがセミオートエスプレッソマシンです。イタリア北部エリアのバールでも多く採用されており、エスプレッソの抽出量や抽出時間、湯温などの設定が可能な上、ボタン一つで抽出完了までをマシンがサポートしてくれます。車で例えると変速ギアを自動で行ってくれるオートマチック車にようなマシンで、日本のカフェでは約98%がこのセミオートエスプレッソマシンを採用しています。
ピストンレバーマシン
ピストンレバーマシンは、今なおイタリア南部エリアのバールで愛され続けているマシンになります。セミオートエスプレッソマシンがオートマチック車だとしたら、ピストンレバーマシンは自らギアを変速するマニュアル車のようなマシンで、日本では滅多にお目にかかれない珍しいマシンでもあります。世界的にみてもピストンレバーマシンを使用してエスプレッソを抽出しているお店は多くありません。しかしながらイタリア南部エリアのバールでは約9割がピストンレバーマシンを採用しています。
日本で飲むエスプレッソが美味しくない理由②お店側のスキル不足
エスプレッソが美味しくない理由の1つに、お店側のスキル不足が挙げられます。
エスプレッソ(抽出の難しさ)
ドリップコーヒーの濃度はTDS1.15%〜1.35%が適正に抽出された美味しいコーヒーといわれていますが、エスプレッソの濃度はTDS10%前後になります。
エスプレッソはドリップコーヒーに比べて約8倍の濃いコーヒーということです。
濃度が高ければちょっとした抽出ブレも分かりにくいと思われがちですが、実際はその逆になります。8倍濃いということは、酸味や甘味といった1つ1つの個性も8倍の強度で感じるということです。
「酸っぱかった」「苦かった」の1つの原因はここにあります。1つバランスを崩せば結果的に美味しくないエスプレッソになってしまいます。
抽出時にコーヒー豆を押し固めるタンピングは抽出ブレを引き起こす原因の1つです。
エスプレッソ(調整の難しさ)
エスプレッソが美味しくない理由には、調整の難しさも挙げられます。コーヒーの粉を極細挽きにして、圧力を加えることで短時間に抽出するエスプレッソは、コーヒー豆をどれぐらい極細挽きにするのか、コーヒー豆を何g使って何秒で何cc抽出するのかなど、さまざまなパターンからその日のベストを探さなければならないのです。味や香りをみながら調整するため、ある程度の味覚スキルも必要です。
また、その日のベストはコーヒー豆の焙煎度合いや焙煎日からの日数、気温や湿度、気圧などにより常に変化するため、「あれ?おかしいな!」と気付く能力も必要です。COFFEE ROASTERY 101では3時間〜4時間起きに調整を行なっていますが、エスプレッソにおいて、この調整が一番難しいと感じています。
正しい飲み方を知らない
エスプレッソが美味しくない理由の最後は正しい飲み方を知らないということです。エスプレッソの正しい飲み方は、提供されたらすぐにたっぷりの砂糖を入れて、軽くかき混ぜた後に3口程度で飲み干します。最後にカップの底に溶け残った砂糖をスプーンですくって食べます。
ここでいう「すぐに」とは、1秒でも早くということです。イタリアではエスプレッソを注文すると数十秒で提供されます。そして提供と同時に砂糖を入れて混ぜ始めるのです。中には提供される前に砂糖の封を開けて待っている人さえいます。
写真を撮ったり動画を撮ったりしていては本当に美味しい本来のエスプレッソを味わうことはできません。COFFEE ROASTERY 101ではエスプレッソを提供する際、事前にエスプレッソの飲み方をお客様にご案内し、ホールスタッフをエスプレッソマシンの前に立たせます。抽出終了と同時に提供できるようにルール決めしています。
まとめ
本当に美味しいエスプレッソを提供するにはコーヒー豆の配合と焙煎度合い、エイジング日数、コーヒー豆の粒度と量、タンピングの力加減、何秒で何cc抽出するのかなどをしっかり見極めて身に着ける必要があります。
そして、簡単にコントロールすることが難しい気温や湿度、気圧の変化などによる違和感に気付く能力も必要です。
アルバイトスタッフが簡単にできるような領域ではありません。
またエスプレッソを初めて飲む方には、正しい飲み方を分かりやすく説明してあげる親切さも必要ではないでしょうか。
COFFEE ROASTERY 101では、コーヒー豆の配合、焙煎から調整や抽出まですべて1人で行なっています。
高級チョコレートのような香味、重厚感がありトロッとした舌触り、まるでデザートソースのような感覚で余韻が長く続く美味しいエスプレッソを実店舗茶房あずまやでお試しください。
次回は実店舗茶房あずまやのエスプレッソについて解説していきたいと思います。
【関連記事】
COFFEE ROASTERY 101
CQI認定Q Arabica Grader
松本安弘