「皆さんはエスプレッソを飲んだことがありますか?」
COFFEE ROASTERY 101の実店舗である茶房あずまやで行ったアンケートでは、9割以上のお客様が「聞いたことはあるけど、飲んだことはない」という結果でした。そして私もその1人で、エスプレッソマシンを導入するまではエスプレッソを飲んだことがありませんでした。
また、飲んだことがあると答えた方でも、「苦かった」「酸っぱかった」というような美味しくなかった印象をもたれた方が多いことに非常に驚きました。
そこで、今回はエスプレッソについて簡単に説明していきたいと思います。
【目次】 |
1.エスプレッソとは? |
2.エスプレッソ「イタリア式」の特徴 |
3.エスプレッソ「シアトル式」の特徴 |
4.まとめ |
エスプレッソとは?
エスプレッソは、イタリアナポリ発祥のコーヒー抽出方法およびその方法で抽出されたコーヒーのことです。イタリアをはじめフランス、スペイン、ポルトガル、スイスなど南ヨーロッパで多く飲まれています。
1806年にナポレオンが大陸封鎖令を発令したことで、ヨーロッパではコーヒー豆の輸入量が減ってしまい、コーヒーを気軽に楽しむことができなくなってしまいました。イタリアでカフェを営んでいた人々もコーヒー豆不足に悩み、その対策としてコーヒー1杯あたりに使用するコーヒー豆の量を減らし、コーヒー豆を細かく挽き、少ないお湯で抽出するという工夫をした結果、現代のエスプレッソが生まれたと言われています。
そしてコーヒーの抽出速度を上げるために様々な機械が考案され、1901年にはミラノのベゼラ氏が蒸気圧を利用した世界初の業務用エスプレッソマシンを開発しました。1906年にはミラノで開催された博覧会でベゼラ氏の開発したエスプレッソマシンによるコーヒーが提供されたことで本格的に世に知られるようになったそうです。
エスプレッソの語源は、「急行・急速」を意味するという説と、「特別に・あなたのために」を意味するという2説があるそうですが、COFFEE ROASTERY 101ではどちらも兼ね備えてできた言葉だと考えています。
エスプレッソとはコーヒー豆を細かく挽き、エスプレッソマシンで圧力をかけて、短時間で抽出した濃厚なコーヒーのことです。日本ではコーヒー1杯130cc〜150cc前後が一般的ですが、エスプレッソは20cc〜30cc前後で小さなカップで提供されます。
エスプレッソ「イタリア式」の特徴
エスプレッソの本場イタリアでは日本よりコーヒーの消費量が多く、ほとんどの人が毎日何度もエスプレッソを飲みます。イタリア人の社交場として親しまれているバールでは、エスプレッソが欠かせない飲み物で、仕事前や休憩、仕事終わりなど多くの人で賑わっています。椅子に座ってゆっくり飲むことはほとんどなく、カウンターで仲間と立ち飲みしてサッと帰るのが一般的ですが、それでも行列ができるような人気店が数多くあります。
イタリア人にとってエスプレッソは、生活の一部と言っても過言ではありません。
注文したらすぐに提供されるエスプレッソに、たっぷり砂糖を入れてスプーンで軽くかき混ぜたあと3口程度で飲みます。また、最後にカップの底にたまった砂糖をスプーンですくって食べる光景もイタリアならではの光景です。
南北に長いイタリアは、北部エリアと南部エリアでエスプレッソの味が大きく異なります。聖地ナポリを中心とした南部エリアのバールでは、今でも9割以上のバールでピストンレバーマシンが導入されており、昔ながらの伝統的な味と風味が継承されています。
濃厚で味わい深く、高級チョコレートのような風味を楽しむことができます。
コーヒー豆は基本的に5種類以上をブレンドして、そのうちの2〜3割以上はロブスタ種を使用。焙煎は主に中深煎りや深煎りで仕上げます。これが昔ながらの本格的なイタリアンエスプレッソです。
エスプレッソ「シアトル式」の特徴
イタリアで生まれたエスプレッソが、大西洋を渡りパナマ運河を抜けてアメリカのシアトルに広まりました。そこから独自のスタイルが構築され、やがてシアトル式やシアトル系といわれるようになりました。
イタリアの北部エリアのバールでは、セミオートエスプレッソマシンを使用しイタリア式ではなくシアトル式に近いエスプレッソを提供しているバールも増えています。
エスプレッソにフォームドミルク、チョコレートソース、ココアパウダーなどでアレンジを加えて飲まれることが多いのも特徴の1つとして挙げられます。
コーヒー豆はシングルからブレンドまで、特に定義はなく、ロブスタ種は基本的に使用しません。焙煎は、主にスペシャルティコーヒーを使用し浅煎りから中煎りで仕上げます。
伝統的な味や風味を楽しむイタリア式とは異なり、シアトル式は香り、アレンジドリンクを楽しみます。
まとめ
エスプレッソは、イタリアナポリ発祥のコーヒー抽出方法およびその方法で抽出されたコーヒーのことです。イタリアでコーヒー豆の輸入が困難になったことがきっかけで生まれた飲み方でもあり、今ではさまざまなエスプレッソマシンが開発され、世界中でアレンジされながら飲まれています。
イタリアナポリを中心とした南部エリアでは、ピストンレバーマシンを使用した昔ながらの伝統的なエスプレッソが「イタリア式」として今でもこよなく愛されています。またイタリアで生まれたエスプレッソがアメリカに伝わり、さまざまなアレンジが加えられながら「シアトル式」として呼ばれるようになりました。
最新のセミオートエスプレッソマシンを使用した「シアトル式」はイタリア北部エリアのバールでも広まりつつあります。「イタリア式」と「シアトル式」のエスプレッソは全く違う風味を持ち、好みが大きく分かれるところです。
今回はエスプレッソについて簡単に解説させていただきました。
では日本でエスプレッソを飲んだことがある方は、なぜ「苦かった」「酸っぱかった」というような美味しくなかった印象をもたれたのでしょうか。次回につづく。
COFFEE ROASTERY 101
CQI認定Q Arabica Grader
松本安弘